一日に8回
これが私の持つパンクの日本記録・・・かどうかは知らないが、相当なパンク回数だと思う。
自宅まではまだ70kmはあろうかと言う山岳道路でパンク8回。日は沈み果たして帰れるのだろうかと頭をよぎった。
パンク修理用のパッチが足りず、パッチを切って分割して使い何とか走行可能にして帰宅することができた経験だ。
タイヤの細さや薄さからロードバイクはどうしても他の車種のタイヤよりパンクしやすい。
とは言え、しっかりとした空気圧を入れておけばまずパンクはしないものである。
空気圧が少ないと地面に落ちているガラス片や金属片などの突起物がよりタイヤにめり込みやすくなるし、ちょっとした段差などではタイヤが段差の角の部分とリムに挟まれてチューブが損傷してパンクすることがあるのだ。
サイクリストの体重にもよるがタイヤ空気圧は8気圧以上にしておくのが良いだろう。
しかし、思いがけない時にパンクはするものなので、いざと言うときにすぐにパンク修理ができるように常に装備を整えておく必要がある。ほとんどのサイクリストはスペアチューブを常備していると思うので、一回目のパンクではスペアチューブとの交換で済む。
パンクしたときのために常備しておくものを下に挙げてみる。
スペアチューブ1本
タイヤレバー2本
パンク修理テープ
携帯用エアポンプ
この4点セットが必須になってくる。万全を期するブルべライダーなどは、これにスペアタイヤが含まれるだろう。また、スペアチューブも2本以上持っているとより安心できる。
私などはスペアチューブとタイヤレバーとエアポンプの3点セットのみの場合がほとんどなので、一回パンクしたらあとはパンクしないことを祈るのみの時が多いのだが、当たり前だがこれはあまりお勧めしない。静岡東京往復サイクリングの時もこの3点セットで済ませていたが、幸いにもパンク無しで済んだ。
しかし、冒頭にも書いたように何しろ1日8回のパンクを経験しているので、パンクの厄介な点は良く知っている。
仰々しいタイトルだが、特に初心者向けにパンクしたときの対処法について基本的な重要なことを私なりにもう少し書いてみる。
パンクしたときに注意すること
パンクしたときのスペアチューブへの交換は慣れれば簡単だ。しかし、注意すべき点があるので書いてみる。
パンクしたら、パンクした側のホイールを外す前にまずすべきことがある。タイヤのどこでパンクしているかを確認することだ。
もちろん、ホイールを外してからタイヤ表面を確認しても良いのだが、絶対にしてはいけないことはパンク箇所を確認せずに、スペアチューブの交換をしてしまうことだ。これをしてしまうと、パンクを引き起こしたガラス片などがまだタイヤに刺さったまま新しいチューブを装着することになり、またすぐにパンクを引き起こす可能性が大だ。パンクの原因を特定せずにスペアチューブ交換を済ませることは絶対にしないことだ。
例えばタイヤにガラス片が刺さっている箇所を見つけたら、当然そのガラスを取り除くことが先決だ。また、その真下にあたるチューブに穴が開いていることもわかるので、タイヤチューブの補修をするときにも補修箇所を探す手間も省けるのだ。
走行中にパンクが発生したときに、どのような状況でパンクが発生したかを察知することも重要になる。一瞬で空気が抜けてしまうようなときは何か鋭利なものでタイヤ表面を切られたり大きな穴が開いたので比較的分かり易い。ただ、あまりにひどいとタイヤそのものが使い物にならなくなっている場合もあるので怖いケースだ。
私の場合走行中にタイヤ表面を刃物でスパッと切られたことがある。もちろん誰かに切り付けられたわけではない。
夜走行中に月明かりに照らされた路面が一瞬光った次の瞬間プシューと音がして一瞬で空気が抜けるパンクだった。
停車して道路を見るときれいに研がれた鎌が一つ落ちているではないか。誰がこんなところにこんなもの置きやがったのだと怒りを覚えながら鎌を持って呆然としているところに、道路に面した家から人が出てきた。私の持っている鎌を見て「ああ、婆やが落としたんだね。」と一言いうや私の手から鎌を受け取りそそくさと家の中に入って行ってしまった・・・
私がパンクさせられたことも知らずに・・それにしても夜の道路の真ん中に鎌を落としていくなど危な過ぎる。タイヤは見事に切られ口が開くような状態だったので交換しなくてはならなかった。
刃物を踏みつけるのは少々極端なケースだが、何か大きなものが当たって破損した場合などは空気が漏れている箇所は特定しやすい。どちらかと言うと問題は、徐々に空気が抜けていくようなケースだ。より小さなものに傷つけれれたり、針のようなものが刺さったりしたままの破損個所は特定しずらい。
こういう場合は刺さった異物や傷つけられた箇所を探すのが大変だが、これをせずに済ませることはできないのだ。
タイヤ表面を目視して、刺さっている物などが特定できればすぐに取り除く。念のため複数個所ないかもチェックすることも重要だ。
目視しても見つけられない場合は、一旦エアポンプで空気をしっかりと入れて空気が抜けている箇所を探って見つけることだ。夜などで見えにくい時には手の平で触れて空気が抜けている箇所を探る。
それでも、見つからなかったら、一旦空気を抜いて、チューブを取る作業に取り掛かる。ここで重要なことは、チューブが入っていた向きを覚えておき、チューブ上に破損個所が見つかったら、バルブ位置を起点にしてタイヤのどこが損傷しているかを確認することだ。その上で確実に異物が刺さったままになっていないか確認することが重要だ。
チューブに空いた穴は空気を入れて、手で探ることで探すことが、比較的容易だ。それでもわからないほどの穴の場合は顔や耳にチューブを近づけて出てくる音や空気を感じ取ることで特定させるとよい。
もちろん自宅で細かい穴を探るには水の中に入れて漏れ出る気泡を探せばいいことは言うまでもない。
スペアタイヤを装着するときの注意点
パンク箇所が特定出来たら異物が刺さっていないかなどを確認した上でスペアチューブに交換する作業に移る。(もちろんパンクしたチューブを修理したいときにはパンク修理に取り掛かる。)
まず手順としては膨張しない程度に軽く空気を入れた上でタイヤにはめ込めて行くことだ。これは、タイヤ内でチューブがねじれてしまわないようにするためだ。
そして、最大の注意点はチューブを入れ終わった後にタイヤを完全にリム内にはめ込むときに、チューブに傷をつけないことだ。
タイヤを完全にリム内にはめ込むときに手の力だけでははめ込むことが出来ず、タイヤレバーを使うことが多いと思う。この時に、タイヤレバーとリムの間にチューブを挟んでチューブに傷をつけないように細心の注意を払うことが必要だ。ちなみタイヤを完全にはめ込むときには最初に少し入れた空気を少し抜いてチューブがタイヤレバーとリムに大きく接触しないようにしておいた方が良い。私も経験済みだが、無理やりタイヤレバーでタイヤをリムに入れ込んだことによって、タイヤレバーそのものでチューブに穴をあけてしまったことがある。これでは元も子もない。初心者によくありがちなことだ。
完全にタイヤをリムにはめ込むことが出来たら、徐々に空気を入れていくが、少し空気を入れたところでタイヤ表面を全体的に手でたたいていき中にあるチューブがねじれたりリムとタイヤの間に挟まれていることが無いようにチューブが均等にタイヤ内に収まるようにバランスを取ってあげると良い。
その上で適正まで空気圧を上げていく。もちろん携帯用エアポンプでは8気圧以上にするのはなかなか大変なものだが、できる限り高めの空気圧にすることが重要だ。(今では携帯用小型エアポンプもそれなりに性能が良く高気圧まで簡単に入れられるものも多い。)
チューブのパンク修理をする場合
穴が開いた箇所を補修するには基本的には穴をふさぐように上から張る作業が必要になる。
パッチタイプのものを張るかゴムタイプのものを貼るかの2通りある。
パッチタイプ(接着剤無しでシールのように貼るだけ)
ゴムタイプ(紙やすりと接着剤を使うしっかりしたタイプ)
パッチタイプのものはただ表面に張り付けるだけで終わりだ。もちろん貼りつけた箇所を上から指で押して圧力をかけてしっかりと貼り付かせることを怠ってはいけない。
ゴムタイプのものはパッチタイプよりも厚くできていて強度が高い。その上、接着剤を使ってくっつけるのでしっかりと貼りつければ完全にチューブと一体化してむしろ、薄いチューブ面よりパンクしにくくなるほど強度が増すと言ってもいい。ただ、穴が開いた箇所周辺を紙やすりでこすり、表面をきれいにした後に接着剤を塗って、ゴムパッチがしっかりとくっつくようにする必要がある。
基本的にはパッチタイプのものは応急処置用として考えたほうが無難と言えば無難だ。ただチューブに空いた穴がごく小さい物であれば、パッチタイプのものでも十分に耐久性はある。空いた穴が少し大きめの場合にはゴムタイプのもので万全を期したほうが良い。
一回目のパンクではスペアチューブを使い、運悪くまたパンクに見舞われたときにはパッチを貼ってパンク修理を済ませることが一般的だと思う。
ゴムタイプの修理は開いてしまった穴や切れ目がやや大きめだったり、チューブを自宅で念入りに修理したいときなどに使うのがいいと思う。
もちろん、パンクした現場で最初からゴムタイプでしっかりと修理したっていい。多少手間はかかっても一番信頼できるパンク修理方法なのだ。昔は、ゴムタイプのものしかなかったわけだし、慣れれば15分程度でパンク修理を完了することもできる。
パンク修理セット(パッチ、タイヤレバー)とスペアチューブと小型エアポンプは走行中に常に携帯していたいものなので、サドルバッグなどに入れておくのが便利だ。但し、雨に濡らさないようにしておく必要があるので、ビニール袋などに入れた状態でサドルバッグ等に入れておくことをお勧めする。また、例え防水のサドルバッグを使ったとしても、細かな埃から守るためにやはりビニール袋などに入れておくことをお勧めする。パッチに少しでも細かな汚れが入るとそれだけで粘着力が弱まってしまうのだ。サドルバッグ等を使わない場合は、私のようにウエストバッグに入れて置き、走りに行くときにはウエストバッグを着用するようにしてもよいだろう。
ちなみにタイヤレバーや携帯用携帯ポンプは一度購入しておけば半永久的に使える。価格によってさほど差があるものではない。私が使っているタイヤレバーは20年以上前に購入したものだ。プラスチック製のものだが、一度飼っている柴犬に噛んで遊ばれたのでやや形が変形したがいまだに現役だ。そもそも、パンク修理やタイヤ交換時にしか使わないものなのだ。
携帯用のエアポンプも同様で頻繁に使うものではない。ただ、いざと言うときに楽に空気を入れたいので、かなり前のモデルより最近の製品の方が簡単に高圧まで入れる点ではありがたい。2度目のパンクを防止するためにも購入する際は高圧まで簡単に入れられるようなモデルを買うことをお勧めする。また、最近は超小型で軽量タイプのモデルも出ているので、よりコンパクト軽量タイプを選ぶこともできる。私は一度買い替えたことがあるが、それはたまたま道路に落とした空気入れが車にひかれてしまい割れてしまったことに因る。
厳冬期のパンク修理にはしっかり備えておこう
1月や2月の寒い時期のサイクリング時に発生するパンクは厄介だ。何が厄介かと言えばズバリ寒さだ。冬用の厚手のグラブをしていても、グラブをしたままではスペアタイヤ交換はしずらく、グラブを外すことになるだろう。ところが素手で作業するには余りにも気温が低すぎるのだ。余りの寒さにグラブが汚れることを覚悟である程度まではグラブをしたまま作業をすることになるかもしれない。
また、寒いのは指先だけではなく、走っている間に温まっていた体が急激に冷やされるので、この体感気温は尋常ではないのだ。一刻も早くスペアタイヤ交換をしてしまいたい状況になるのだ。気温が5度を切る状況でしかも吹きさらしの中だと、汗が一気に冷やされて、はっきり言ってパンク修理をするような余裕などないのだ。せいぜいスペアタイヤ交換がやっとなのだ。
備えあれば患いなしとは言うが、こういう時のためにパンク修理セットに加え軍手は携帯しておいたほうが良い。一番良いのが人差し指、親指、中指だけがフィンガレスになっているフィッシング用のグラブだ。これだと、防寒と同時に作業効率も高まって一押しなのだ。また、薄手でも効果は十分なのでウィンドブレーカ―(レインウェアでもよい)があるとパンク修理中の急激な体温低下を防げるので絶対におススメしたい。こういうちょっとした備えがないと、極寒期のパンクは罰ゲームのような耐寒訓練みたいな様相になるのだ。