アワーレコードの話 その1 起爆剤となったボードマンのツールデビュー

自転車競技のアワーレコードと言うとどうしても、クリスボードマン、ミゲル・インデュライン、トニー・ロミンゲルを思い出してしまう。

90年代前半はタイムトライアル競技が盛んなイギリスで、オブリ―とボードマンがアワーレコードを競っていた。そしてボードマンの52km台がアワーレコードだった。

そのボードマンがプロに転向して1994年のツールドフランスに出場。7.2kmのプロローグで平均時速55.151kmで2位のインデュラインを15秒、3位のロミンゲルを19秒離して圧勝した。圧倒的なタイムトライアルの強さで既にツール3連覇ジロ2連覇を成し遂げていたインデュラインと前年のツールでインデュラインを最後のタイムトライアルで負かしたロミンゲルの一騎打ちが予想されていただけに驚きだった。しかも、平均時速55kmを超えるスピードは凄まじく、平均時速48km超で走っていた前走者で、その年に世界チャンピオンになるフランスのリュック・ルブランをゴール前に追い抜いてしまったのだ。

結局94年のツールはインデュラインが前半のロード個人タイムトライアル64kmで2位のロミンゲルに2分の差をつけ、山岳でも強さを見せつけて圧勝した。対するロミンゲルはこの年の猛暑による体調不良にも見舞われ失意の途中リタイヤに終わる。注目されたボードマンは、やはり起伏があり距離が長いロードタイムトライアルではインデュラインには歯が立たず、5分以上の差をつけられた。

そして、ツールが終わった後の9月インデュラインがアワーレコードに挑戦することになった。インデュライン曰く「ツールを走っている選手であれば少し練習をする程度でアワーレコードは達成できる」。

そして、まさに有言実行でインデュラインは53kmを少し超えるアワーレコードを達成する。

しかし、興味深かったのが、インデュラインのアワーレコード達成の後すぐに、ツールをリタイアに終わったロミンゲルがアワーレコードに挑戦したことだった。

そしてなんと、53.8kmを超える記録を叩きだしてインデュラインの記録をあっさりと破ってしまった。ロミンゲルはトラックは全くの初心者でバンクを走ること自体初めてだったと言う。そしてさらに信じられなかったことが、その一週間後に2回目のアワーレコードに挑戦し、なんと55.291kmと言う信じられないような記録を作ってしまったのだ。ロミンゲルとしてはツールの不甲斐ない結果をばねに挑戦したのだろうと思う。

1994年以来ボードマンはプロローグで勝つことに全てを掛けてツールに出場したびたびプロローグで勝っている。そして、1996年9月、再びアワーレコードに挑戦し、あのスーパーマンスタイルと呼ばれる姿勢で56.375kmと言う驚異的な記録を達成した。

ちなみにこの年、6連覇がかかったツールドフランスでインデュラインは敗北した。そして、翌月行われたアトランタオリンピックのロード個人タイムトライルでインデュライン金メダル、インデュラインと同郷のアブラハム・オラーノが銀メダル、ボードマンは銅メダルだった。

ボードマンはアルプスやピレネーを越すような上り坂にはめっぽう弱く、ステージレースに勝てるような選手ではなかった。しかし、彼の突出した平地のタイムトライアルの力を持ってツールに切り込んだことによって、インデュラインやロミンゲルといったロードレース界のオールラウンダーに刺激を与えた。

しかし、ボードマンは56kmを越すアワーレコードを達成したことで、トラックでは自分が一番強いんだと言うことを証明して見せたことはとても興味深い。

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