真夏でも低体温症で死ぬことがある?サイクリング

先日の遠征時に寒さにやられて酷い目に遭ったので書いておく。

7月も半ばだと言うのに、凍えて死にそうになった。大げさに聞こえるかもしれないが心底そう感じた。紛れもなく今までの人生の中で一番寒さにやられた体験だった。氷点下5度の中ロードバイクで走って、ボトルの中身が凍ってもこんなに凍えるようなことはなかった。しかもそれは真夏起こった。

長野県飯田市から静岡県掛川市へ向けて夜10時30頃出発。

当初は翌朝出発しようとしていたが、雨が本格的になりそうだったので夜に出発したのだ。ところが実際は雨は既に本降りになっていた。

レインジャケットなしでずぶぬれになっても7月中旬の気温なら問題ないだろうと高をくくって走り出した。ところがこれが本当に大きな過ちだった。

もう一つの誤算は途中にある新野峠だ。初めて走るルートだったが、新野峠という峠越えをするだろうことは予め想定していた。しかし、思っていたより標高が高かったのだ。そして、長野県から愛知県側に進む分、下りが長かった。

長時間本降りの雨に降られながら、標高が高い地点から長い下りを進んだこと。これが全ての要因だった。

愛知県に向けて南下するのでせいぜい標高は数百メートル程度だろうと思っていたが、実際には1060mもあったのだ。

7月半ばだから、走り出しはもちろん何も寒くない。日中は30度を超すような気温だったから何も気にすることはないだろうと思っていた。

ところが本降りの雨は降り続き、長野県飯田から静岡県を目指すルートだけあって全体的にやや下り基調の道が続き体は温まらることなく冷えていく。1時間半ほど経過したところでコンビニに立ち寄った。

テールライトの電池を交換するためだ。この小休止で濡れた体が一段と冷え込みこれから迎えるであろう高低差に不安がよぎる。

どのあたりが新野峠になるのか分からないまま夜道を進んで行くと、上りがやけに続く道になった。

上り道の途中にトンネルがあり、そこにあった標高表示が既に600mに達していた。上りだと言うのに本降りの雨にずぶ濡れになっているので体は全く温まらない。まだ上りが続く様子に、せいぜい標高700m程度で収まってくれてと願いながら進む。

何とか峠までたどり着くと、一気に下って行く。直線的な下りも多く、そして、長い。本降りの雨と初めて走る道、真っ暗な夜道なのでスピードは出せない。下りはただただ体温を奪われていくだけだった。

先程通過した峠が何峠か分からないままだったが、とにかく長い下り坂に完全に体温を奪われてしまった。ただ、安全に下ることだけに集中していたわけだが、上半身が猛烈に冷えてきてこれはまずいと言う状況になってきてしまった。気温はおそらく18度程度、峠でも15度を下回るまでにはなっていなかったように思うが、下りで冷やされた体感気温は5度以下と言ってもいいくらいだった。

ハンドルを握る上半身が震え出すような状況。下りの途中でこの先に道の駅があることが分かったので、もはやいやおうなしにそこで止まるしかなかった。

便座に抱きつく

何とか下り途中にある道の駅をやり過ごすことなく入るとトイレに駆け込んだ。目的はただ一つだ、トイレの便座の熱で体温を回復させることだ。こんな真夜中に道の駅が開いているわけもなくそれしか方法はなかった。

まさか、便座に抱き着くことになろうとは夢にも思わなかったが、それほどに危険な状態になっていた。手は真っ白で完全に熱を失っている。とにかく便座の熱で正常な状態に戻すべく密着させる。

幸にも本当にきれいな便器でありがたかった。小さな汚れ一つ見当たらないきれいな便器で、便座の裏も新品同様の状態だった。

とにかく震えながら、便座の熱を取り込もうと必死な状態だったのだ。便座の温度をマックスまで上げたかったので試みたが、どうも施設の管理者しか操作できないように設定されていたので断念した。

あまり時間は覚えていはいないのだが、1時間半から2時間くらい便座で体の部位を少しずつ変えながら熱を取り込むことを繰り返していた。やっと危険な状態は逸したと思える頃には2時間くらい経っていたのではないかと思う。持っていた食べ物もカロリーメイトブロック2つだったのでもちろん食べたが、2時間経っても体の震えはまだ収まらない状況だった。

しかし、情けない話だが便座には本当に助けられた。

痴ほう症の老女が冬に徘徊して一晩外で過ごすことになったが、翌日無事発見されたという出来事を思い出す。命が助かったのは彼女が犬を抱えて夜を過ごしたからだった。(猫だったかもしれない) まさか、便座をかかえるようにして夜を過ごすことになろうとは夢にも思わなかったが、この無事に命が助かった婆さんと自分はほとんど同じような状況だったように思う。

トイレットペーパーで簡易シャツ

バックパックはレインカバーなしなので中身はずぶ濡れで、全てが濡れている状態だった。とりあえず、長袖ジャージ―などはトイレに入るや否や脱ぎ捨て、半袖ジャージ1枚になっていたわけだが、これも体温で乾くような訳もなく、手が回復してきたころに脱いで、トイレットペーパーで水分を吸い取ったり、便座の熱で少しでも乾かそうとしてみた。

トイレ内の温度を少しでも上げたいもので、トイレ内の仕切りの上に屋根をつけたい気分だった。また、24時間換気も止めたい気分だったができなかった。

上半身は寒さで震える状態なので、どうすべきかと思案して試みたのが、トイレットペーパーを上半身に巻き付けて簡易シャツにすることだ。うまく巻き付けることはなかなか難しかったが、半袖若しくはノースリーブシャツの様な感じに巻き付けることできた。たかがトイレットペーパーだがこれだけでもかなりの保温効果があった。薄っぺらいトイレットペーパでも凍えそうな状況にあっては効果絶大だ。とにかく、限界状態になると何とかしようとするものだ。

時間的には気温が一番下がる朝4時頃だ。トイレを管理している人には本当に申し訳なく、濡れた衣類などでトイレの床を水浸しにしてしまった。また、トイレットペーパーも無駄に使ってしまった。しかし、きれいにトイレを管理していくれていたおかげで本当に助かった。会えるのであれば助けてもらったお礼を言いたい。

トイレに入って3時間経つころだろうか、もちろんまだ体の震えはあるが、何とかスマホを見ることができる状態にはなった。本当は外に出て自販機でホッとドリンクを購入して飲みたいところだが、それすらできないほどにまだ寒さで外に出るほどまでには回復はしていなかったのだ。

スマホでチェックすることは、雨の状況と気温、レインコートを購入できる最寄りのコンビニを探すことだった。

現在地の気温は18度から19度で20度以上になるのは朝7時以降、雨が収まるのもそれ以降の予報だった。

近くのコンビニまでは十数キロあることが分かったので、何とかそこにたどり着いてレインコートをゲットすることが当面の目標になった。

5時頃に外に出ると幸いなことに雨がほぼ止んでいる。しかし、寒さで体が大きく震えてとても走れる状態ではないので一旦トイレに戻った。

まだ下り基調が続くので濡れた半袖ジャージ一枚で走るのはまだ無謀だった。とりあえず、上半身の前面に新聞紙かダンボールのようなものを入れて風よけを作りたいところだったがそのようなものは見当たらなかった。

諦めかけた時に幸いトイレの窓越しのところに、サービスエリアなどで無料配布しているロードマップが置かれたままになっていたのでそれをジャージ内に入れて体の前面を覆い風よけを作ることができた。

この状態で意を決して朝5時過ぎに再出発した。このロードマップ効果に助けられて下りでも熱を奪われるのを最小限にとどめて進むことができた。雨が20分程度の間降らないことを祈りつつ、そして、コンビニにレインコートがあることを祈りつつ進んだ。

たどり着いたコンビニにレインジャケットがあったのでほっとしたが、とにかく真夏でもレインジャケットは絶対に必要だと思い知らされた。

バックパック用にもレインカバーはやはり必要だと分かった。

何と言う峠か分からず越えたところが、やはり新野峠だった。

それにしても今回はあの道の駅のトイレに助けられたから帰ってこられたことは間違いない。”トイレの神様”という歌があったが、私にとってはまさに文字通りそれだった。(歌詞の内容は知らない)

紛れもなく低体温症に陥ったわけだが、実はサイクリングの場合ある程度の防寒対策を施す冬シーズンより、油断する夏の方が起こりやすいのかもしれない。

登山でも同じだ。私が思い出すのは2009年に北海道で起きた ”トムラウシ山遭難事故” だ。今回の私と同じ7月中旬に起きた低体温症による登山者の死亡事故だ。軽装備のまま風雨にさらされ体温を奪われ死に至った。8名がなくなった事故だ。

登山とサイクリングという違いがあれど、低体温症に陥ったメカニズムは全く同じだと思う。トムラウシ山の場合標高は1000m台。そこで、暴風雨にさらされたわけだが、私の場合には本降りの雨だったが風はない。しかし、標高1060mから長い下り道を一気に下ることで風にさらされ続けて体温を奪われ、トムラウシと同じ気象環境を作っていたことになる。

トムラウシでは60代くらいの方が一番多くなくなったが、今回の私の体験でも体力が弱まるその年代なら十分に死に至るだろうことが実感できた。

とにかく夏だからと甘く見ることは厳禁だ。

夏でも低体温症で死ぬことは大いにある。

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